【ACアダプタ開発秘話】

「こだわりの収納袋」 限定発売 しました。 詳しくはこちらです。



-------------------------------
はじめに
2005.10.20 (つ)


物をつくるために技術は欠かせませんが、より良い(と作り手が信じる)ものを作るには、「こだわり」がとても大切だと思います。そして、こだわればこだわるほど、ものづくりはたくさんの問題に直面するものです。

この場所は、こだわりぬいて作った!! おかげで問題山積だった!! MOONS製ACアダプタの開発秘話的な事を書いてみようということで書き始めるのですが・・・・

一般のお客様にどこまで内情をバラしてよいものか正直考えるところです。MOONSは企画者でメーカでもあり、商品は売れなければならないという宿命がありますから、そういう「シガラミ」から、話の内容に正確でないものや誇張が入ってしまうかもしれません。
お客様へは、あまり突っ込まないでいただきたいな、と願いつつ・・・・書き始めるわけです。


-------------------------------
トランスの話
2005.10.24 (つ)


トランスとは、いきなり電気設計の敷居の高そうな話になりました。
トランスはACアダプタの中で一番大きい部品です。ACアダプタの大きさはこのトランスで決まると言っても過言ではなく、MOONSのACアダプタの高さと幅はほぼトランスのそれと同じになっています。

「ACアダプタをもっと小さく。」というのはメーカ側の永遠の課題なのですが、MOONSでは高さと幅をできるだけ小さくしよう(長手方向が少々長くなるのは仕方がない)と開発をスタートさせました。
電源(ACアダプタ)の大きさは、扱う電力が大きいほど大きくなってしまう。これは、トランスなどの内部部品に大きいものが必要になることが主な理由なのですが、実のところMOONSのACアダプタの電力値はかなり大きいので、高さと幅を小さくすることは開発当初からかなりの困難が予想されたのでした。

手持ちのパソコン純正ACアダプタの裏面表示と、MOONS製ACアダプタのスペックを比べてみていただきたい。大型ノートパソコンにも十分に給電するためにはこれほどの電力になってしまうのです。

そこで、トランスの話に戻るのですが、電力を大きくすればトランスは当然大きくなる。そしてトランスは電線をコアに巻いた構造なので、細長い形状や平べったい形状は作りにくく、コロコロとした直方体に近い形状になりやすいのです。
細長いACアダプタの内部構造を考えているうちに、「電力容量を満たすトランスのうちできるだけ小さいものを使って、トランスの高さと幅ギリギリまでACアダプタの外形を細長くする。」という構造の案が出てきて採用したのだけれど、この構造のために後々いろんな苦労をすることになったのです。


-------------------------------
もっと小さく作りたい
2005.10.28 (つ)


電源(ACアダプタ)を劇的に小さくする方法が、実はあるのです。主にコストの問題から市販のACアダプタには全く縁の無いことだけれど、内部の動作周波数を上げれば良いのです。そうすると原理的にトランスやコンデンサといった部品(これらの部品は全体の体積の50%以上を占めるほど大きい)に小さいものを選べるようになります。
しかし、ただ高周波化してもうまくいかないわけで、例えば、パソコンのCPUのクロック周波数を上げると発熱が増えますが、ちょうどこれと同じで、内部動作を高周波化すると電源(ACアダプタ)の内部発熱や不要ノイズが増大するからです。これを解決するためには「共振スイッチ」とよばれる高等な方法(ほかにもいろいろと)を使ったりします。

MOONSはもちろん、小型化のためにさまざまな検討を重ねて、例えば、回路トポロジと過渡解析にSCATとPspice(両方ともシミュレータソフト)を導入したし、USのデバイスメーカと何度も英文メールのやり取りをしたし、九州大学のスイッチング電源の先生に相談にのってもらったりもして、試作機に何度も改良を重ねましたよ。
その結果というか、しかしながらというか、それなりの小型化(電力のわりにかなり小さい)は実現したのですが、「種々の理由」により「ACアダプタの劇的な小型化」には至らなかった・・・・残念ながら。
そのうち見てろよ! とは思っていますが・・・
 ※「種々の理由」とは? などと聞かないでください。

後日、小型化にはとんでもない誤算が現れることになったのですが、これは書かずにはいられない!
小型化に四苦八苦しているときに現れたあのケースデザイン。コード巻取りのためにツバをつけたケースデザインは使いやすくてカッコいいと、評判はすごく良好なのですが。
それは分かるのですが、ACアダプタが太く見えるじゃないか! クリヤーカバーを付けたことで本体の厚みも厚く見えるじゃないか!。小型化に苦労した設計者は怒るだろうな、などと、ケースのデザイナーは考えもしなかったのですよ、きっと。
おかげでいいデザインができていますが。


---------------------------------
ACアダプタのデザイン
2005.11.02 (つ)


今年9月だったと思いますが、あるパソコンメーカの純正ACアダプタのデザインをWebで初めて見たときは驚いた。
スゴイ!という驚きではなく(実際、良いとは思いますが)、初期に考えたMOONSのコンセプトそのままだ!という驚きでした。

昔のイラストを引っ張りだしてみると・・・最初に考えたデザインは、無謀にも細長い三角柱でした。当時この中に入れる回路を一応は検討したのだけれど、三角柱はデッドスペースが多くなるため、扱う電力に対して見た目がかなり大きくなってしまい、断念。その次に当然くるのが、「四角柱ならどうだ?」という流れ。
そこからいろいろあって現在のデザインができたのですが、そのときの四角柱と例の純正品とが似ているわけです。

あ〜、四角柱にしなくて良かった。と、ほっと胸をなでおろしました。いろんな意味で。

現在のデザインは、ある著名なデザイナーの手で作られました。売りの機能であるLED表示と全体の造形がうまくまとまっており、いいデザインになったと思います。ACアダプタのデザインに一石を投じた!ことは間違いないしMOONSの誇りでもあるのです。
ただ、惜しむらくはグッドデザイン賞が付いていないことなんですけどね・・・・


---------------------------------
LED電力モニタの役割とは
2005.11.07 (つ)


例えばオーディオ機器のレベルメータのように、ノートパソコンの消費電力がリアルタイムで見られれば面白いなぁ。という発想からLED電力モニタの開発がスタートしました。
最初は、10個程度のLEDを並べれば変化を楽しめるかなという案もあったのですが、製品版はこのとおり5個。消費電力の変動に対する点灯変化の応答スピードもかなりゆっくりしており、”リアルタイム”というよりかなり時定数の大きい応答スピードになっています。モニタ機能として、「測定」しようと思うと、分解能がLED5個なので少々役不足ではないかと思うでしょう。

このように作り込んだ理由は、実際に机上で使った時の見た目の美しさとを一番に考えたからに他なりません。「LEDメータの位置づけ」---と書くと仰々しいですが---は、あくまでイルミネーションであり、測定器ではない。というものなのでした。
当然のことですが、ただのイルミネーションだ! と言い切るのはエンジニアにしてみれば面白くなく、「イルミネーションなのだから、測定精度なんてだいたいでいいよ。」という物よりも、測定器のようなものを作る方が面白いに決まっているわけです。
今回はLED5個だし、精度なんて固いこと言わないでキレイに作ればいい・・・。

ところが、開発の途中で話が違う方向に進む・・・。「製品の魅力を落とさない作り込みが必要だ! だから高い測定精度が必要なのだぁ!!」という天の声が・・・・(次につづく)


---------------------------------
LED電力モニタの役割とは_その2
2005.11.14 (つ)


前回に続いてLEDです。
当初の回路は全てアナログ。電力部分からの検出信号をアンプでゲイン調整してコンパレータで切り分ける。そこからレベルに合わせてLEDを点灯するというものでした。イルミネーション動作はカウンタICでタイミングを作っていました。使ったアンプはオフセット電圧が1mV程度の一般的なもの。そうすると測定精度を考えたときに、最悪時にはフルスケールの15%程度の誤差・バラツキが混入する計算になりました。
「イルミネーション」としては妥当な値とも思うんですけどね。

ところが、例の天の声「コストがかかっても精度が必要なんですよ!!」で、回路を一新することに。
本当にいいんですね? けっこうかかりますよ? とかなんとかあり、回路は全面変更。

アンプはオフセット電圧が数μVの高精度品(コスト高いです)、コンパレータとカウンタの代わりに、10bitのA/Dコンバータで取り込み演算するマイコンを導入(これもコスト高いです)。
その結果、分解能は小さいながらすばらしく精度の良いLEDモニタになったのでした。
精度の良い凝ったものを作る方が、やっぱり面白いですね。

それで、どれくらいの精度が出てるかって?
非公式ですが、フルスケールの数%以内にかるく入りますね。下手なアナログテスターより良い精度かもしれません!?


---------------------------------
日本製アルミ電解コンデンサの話
2005.11.18 (つ)


電源(ACアダプタ)の寿命を決める部品は、実はアルミ電解コンデンサ(単に「電解コンデンサ」とも呼ぶ)です。アルミ電解コンデンサは内部に電解液が入っており、この液体は少しづつ蒸散するので、コンデンサの部品特性が徐々に低下して、そのうち電源の特性が悪化する(寿命を迎える)ことになります。

アルミ電解コンデンサによって寿命が決められるのは、実は電源だけではありません。あらゆる電子機器に当てはまるのですが、特に電源回路のように、電流を多く流す回路や高温で使う機器では、アルミ電解コンデンサが劣化しやすいので、そういう箇所に使う場合は、きちんとした性能の出る信頼性の高いものを使う必要があります。

少し前、安い外国製のアルミ電解コンデンサが原因になった機器故障がたくさん発生していました。例えば、パソコンのマザーボード上に載っている電源回路です。
一流ボードメーカ、一流パソコンメーカを問わず、アルミ電解コンデンサの「パンク」がたくさん発生したことがありました。これは、厳しい使用条件の回路に性能や信頼性が低い部品を使用したのが原因でした。

そこで、日本製アルミ電解コンデンサ。
電源用の、性能が良く信頼性の高いアルミ電解コンデンサは、日本メーカのものが一番です。機器メーカの中にはわざわざ「日本製電解コンデンサ使用」とアピールする所もあるほどです。
電源メーカの中にはもちろん、部品のランクを下げてコストを抑える(同時に性能や寿命が抑えられる・・・)所もあるでしょうが、MOONSはもちろん、製品に見合った、良い日本製アルミ電解コンデンサを使っています。


---------------------------------
ACアダプタから出る音
2005.11.22 (つ)


会社で使っている時には気付かなくても、自宅で夜中にノートパソコンを動かしていると、ACアダプタからにぎやかな音が出ていることに気が付くことがあります。これ、気になりだしたら結構気になります。
いちばん分かりやすいのは、ACアダプタのDCコードをパソコンから外した状態(ACコンセントにはつないだまま)です。ACアダプタに耳を近づけると、ごく一部の機種を除いて、「ピー」とか「チリチリー」とか音が聞こえます。

MOONSのACアダプタでは、この音はしません。しないと言うより、消したというのが正解。

そもそも、なぜ音がするのか?
最近のACアダプタは、ほとんどがスイッチング電源タイプで、もともと数10kHz以上の周波数で動いていますが、この周波数は人間の可聴域外なので聞こえません。ところが、パソコンから取り外した場合など供給電力が小さくなると、動作周波数を低くする仕組みになっています。そうすると動作周波数が人間の可聴域に入り、「ピー」とか「チリチリー」とか聞こえるわけです。

では、なぜ動作周波数を低くするのか?
ACアダプタの待機電力を手っ取り早く小さくするためなんですね。そういう制御をすぐに実現できるICがあるので、各ACアダプタのメーカともそういうICを使うのですが、難点は音が出ること。
静かな場所でしか気付かないような音は、それほど重要ではない。ということなんです。

MOONSも待機電力を下げるために、動作周波数を下げる制御をしているのですが、人間の可聴域をうまく外す独自のチューニングを加えて、無音化しています。


---------------------------------
Moenegallet(メネガレット)こだわりと命名の由来
2005.11.30 (K2)


ACアダプタのアクセサリとして作ったマルチタップ「Moenegallet (TM)」。こだわりと命名の由来とは・・・・
マルチタップを普通に作ると、メガネプラグをストレートに出して、両脇にコンセントをひとつずつ設けるというアプローチになります。
その場合、もしタップをコンパクトに作ってしまったら、ACアダプタへマルチタップを装着した状態ではACアダプタ本体とタップのコンセントの位置が近すぎて、役に立たなくなることがあります。マルチタップのコンセントに別のACアダプタを付けるような場合を考えると、マルチタップは大きくなければ、ACアダプタどうしが干渉してしまいます。

コンパクトなタップでこの問題を解決するために、Moenegalletではコンセント口をお互いに直角に配列しました。これが命名の由来です。
"メガネ"の入力と出力の方向を直角に"捻って"配置したので、字を入れ替えて"メネガ"です。コンセントはアウトレット(outlet)とも呼ばれますので、"メネガ"と"let"をくっつけて、"メネガレット"という造語を作りました。
Moenegalletでは、タップの寸法規格内でめいっぱい小さい筐体ケースに納めるために、今回コンセントの板金金具とメガネプラグ部分の金具ともに金型を新たに起したのですが、これら内部の端子金具は、複雑で非常に精度の高いものになっています。入力の端子に金メッキを施したのもこだわりの点です。

もちろん電気安全法<PSE>の安全認証を受けています(定格125V/7A)ので安心して使えます。


---------------------------------
Moenegallet(メネガレット)のこだわり_その2
2005.12.05 (K2)


様々な所にこだわったメネガレット、耐久性にもこだわりました。

独自に開発した内部の金具は、材質に耐久性の高い真鍮を選びました。そして、独自設計の形状を、高い精度で作りこんでいることと合わせて、メネガレットはとても信頼性が高いものになりました。

プラグを挿入したときの、カナグとケースに加わるストレスをうまく分散するように、アソビの量も調整して・・・、出荷前の耐久試験では、ふつうの使用条件なら10年以上もつことを確認しています。使っているうちに差込みが緩くなるようなことは、まずないでしょう。

金具の型を調整してプラグを差し込んだ時の感触を調整したり、外部に露出しているメガネプラグのオス端子に、接続信頼性の向上をねらって金メッキを施すなど、見えない(見える?)ところにもこだわりがあります。

厳しい注文が多くて、金型会社の(り)さんは、本当に泣きそうな顔をしてましたね。

<下図は左から、ケースのワイヤーフレームモデル、ケース3Dモデル、内部の金具>



---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!
2005.12.12 (つ)


いざ自分で買って使ってみると気になる所が出てくるもので、ACアダプタに付属の収納袋なのですが、袋の質感にちょっと不満が出てきてしまいました。

この袋、実は大きさやポケットの付け方など特注品なのですが、「モノ」として見たときに、中に入れるACアダプタの質感とギャップがあるというか、もう少しこだわりたいというか。。。

そこで、このたび「こだわりの収納袋プロジェクト!」を勝手に立ち上げてしまいました。自分で納得できるいい物を作りたいのです!
袋の構造は簡単なもので良いのですが、生地の質感にはこだわりたい。できればスエードみたいな柔らかい革素材、または、スエード調で厚手の柔らかい布。縫製がしっかりしたもので、仕上げの丁寧なものにしたい。
それなりのコストが掛かりそうですが、物がよければある程度の値段になってもOKというスタンスです。何より自分で欲しい納得できる、いい物を作りたい!(それを自分で使いたい!というのが本音のところ。)

このプロジェクトの進捗もここで紹介していきたいと思います。うまく出来たときには、もちろん販売も考えていますが、手間とコストがそうとうかかるはずなので、ほんの少ししか作らない予定です。量産は全く視野に入れませんので、ご了承いただきたいと思います。

こだわりの収納袋、どんなものになるかはこれからなのですが、興味のある方はご期待ください。


---------------------------------
トランスの話_その2
2005.12.20 (つ)


以前、ACアダプタの大きさはトランスに大きく依存する話を書きました。それで、電力容量を満たすトランスのうち、できるだけ小さいものを使ったのですが、このトランスも実は一筋縄では行かなかったわけで・・・

電源のトランスはコアと巻き線の組み合わせでできていますが、設計は、自分で標準品のコアを選んで巻き線の構成を設計する、カスタム品になるのが一般的です。
今回のトランスは、普通にトランスメーカのカタログに載っている標準品のコアでは、ちょうど良い形状のものがありませんでした。もちろん小さいコアもあるのですが、希望の電力が扱えません。
いろんなトランスメーカのコアを調べましたが、やはりだめ。幅はよくても高さが大きいとか、巻き線のスペースが不足するとか。いままでに無い形状のACアダプタを作っているので、合う既存品が無いというのは当然か・・・
そこで、しょうがない。型から作ってしまおう。ということで、立派なフルカスタムのトランス(まず普通はここまでやりません!)が出来上がったのでした。

と、ここまで、複数のメーカと協業したり何度も作り直したりして大変だったのですが、これで終わらないのが開発秘話!

海外向けも視野に入れた開発なので、温度の上がりやすいACアダプタ用トランスには、北米の安全認証で登録が必要! ということが発覚。これ、材料業者と書類をそろえたり、規格(もちろん英語)を読んで理解したり、登録機関とのやり取りをしたりと、めんどうなんですよ。すごく時間がかかりますし。

そうこうして、トランスはやっと完成、MOONSは件の登録業者になったのでした。


---------------------------------
プリント基板
2006.01.05 (つ)


2006年です。あけましておめでとうございます。
新年といえば、トランジスタ技術(CQ出版社)の2006年1月号には、付録にプリント基板が付いていました。 それを眺めていて思い出したのが、どこかで見た文句「プリント基板は電子機器のなかで最も重要な部品の一つである」。

昔々、回路を組み立てるときは部品を板の上にならべて固定し、部品どうしをワイヤーで接続していました。これを簡単にするために、あらかじめ板に配線を作り込んだのがプリント基板の始まりでした。
現在のプリント基板は単に接続だけを考えたものではなく、配線の引き方が回路動作に及ぼす様々な影響を考慮に入れて作られています。そうしないとうまく動作しないものが多く出てきたためです(回路の動作スピードが上がったり、電力密度が上がったりしたため)。

電源(スイッチング電源)は実は、プリント基板の設計がとても難しい回路の一つです。高い電圧のかかるトランジスタで大電流をすばやくON/OFFさせながら動作する部分と、高倍率のアンプで微小誤差を扱う制御部分が混在した「高速大電流アナログ」の回路だからです。
ですので、プリント板の設計は非常に重要で、配線の長さや太さはもちろん、他の配線との距離、電流の流れる経路、大電流による電圧降下、放熱の効果、電磁ノイズの抑制などなど、うまく設計しないと回路は同じでも全く動作しないほどです。
プリント板設計は0.1ミリ単位で調整して、最後は100本を超える配線に色を塗りながらチェックします。 今回のACアダプタでも全くこのとおり。
簡単なディジタル回路のプリント基板なら自動設計ができますが、電源のプリント基板はマニュアル配線でないと満足のゆくものができないのです。

最も重要な部品の一つが、部品のなかで唯一自由に設計できる。大変ですが、とても重要でやりがいのある仕事です。


---------------------------------
LEDの光らせかたのチューニング
2006.01.16 (つ)


クリアーパネルの下から光る青色LED・・・今となっては青色LEDのインジケータは全然珍しくもないのですが・・・やっぱりきれいなので私はかなり気に入っています。
このLEDの光らせ方もたくさんのこだわりがあったのでした。

まず光の強さの調整から取り掛かりました。LEDは流す電流によって輝度が変化します。そこで、電流をミリアンペア単位で少しづつ変えたLEDパネルをいくつも作って比較するのですが、そのうちに別の条件で光の感じ方が全く異なることが分かってきます。
それは、箱(ACアダプタのケース)に入れた時です。箱の真上からLEDを見るととても明るく見えるのですが、LEDは箱の表面から数ミリ内側に入っていますので、少し斜めから見るとLEDが全く見えなくなってしまいます。箱の上へクリアパネルを被せてもこの状況(指向性が高い)は変わりません。

そこで初めに考えたのが、白い半透明のシートを、箱とクリアパネルの間にはさむ案。半透明で光が散乱するので斜めからも見えました。ところが、少し物足りなかったんですね。青色LEDがもっとキラキラした感じが欲しかったのですが、この方法ではひどく乳白色になってしまいます。

そうだ、クリアパネルの裏に窪みをつけて、その下からLEDを光らせるとうまく散乱するはず!
これがとてもうまくいきました。真上から見ても、斜めから見ても、ほとんど真横に近くても、LEDの光がきれいに(しかも立体的に)見えました。

この窪みは、円錐形が良いのか?、半球形が良いのか?、窪みの大きさ・直径はどうするか?、窪みの表面仕上げは磨くのか?それとも・・・
検討と試作を重ねて、現在の形に落ち着きました。
どこにでもありそうな青色LEDですが、きれいに光るこの仕上がりは、本当はどこにもないと自負しています。

私個人的には、窪みをブリリアントカット(そう、ダイヤモンドの・・・)にして、もっとキラキラさせたかったのですが、それは凝りすぎのようで・・・


---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!_その2
2006.01.27 (つ)


こだわりの収納袋プロジェクト!の2回目。途中経過です。

こだわりの袋ですので、様々な材料を考えたなかでもやはり革がいいのでは! と思いWebで検索してみました。当初から思い描いていたスエードみたいな柔らかい革も、いろいろな革があるようです。

Webで少し勉強したら、最近テレビで紹介されたらしいとかの革加工の工房の情報を仕入れて、飛び込みでとりあえず相談に行ってみました。
そこは革小物やバッグを作っている小さい工房でしたが、いろいろな作品を見ていたときに良い材料を発見しました。
柔らかく手になじむような・・・鹿革! 高級な革手袋にも使う、あのディアースキンです。
この際「スエードみたいな」はどうでもいい、柔らかくて手触りの良いこの革を袋にすればとてもいいじゃないですか!

そこで、持って行ったACアダプタのデモをしつつ、ご主人へ相談して1時間ほど。まずは試作を作ってみましょうとなりました。今はわりと仕事が混んでいるので若干時間はかかりそうとのことでしたが、こだわりも理解してもらい、いいものができそう。いい所と出会えてよかった。

試作完了の知らせが楽しみです。


---------------------------------
プリント板の話_その2
2006.02.13 (つ)


電気製品の中身を見たことのある人なら分かると思いますが、普通の家電の電気回路に使われているプリント板はかなり安そうに見えますよね。
確かに、一定の機能・性能が実現できさえすれば、外側のデザインとか質感に関係のないプリント板の作りなんてどうでもよくて、コストの安い方が良いわけです。

ACアダプタはその典型なので、普通はコスト第一の安いもの(CEM3という材質で、板の構成は片面板で。。。)を使うのが常道です。その安価なプリント板で "一定の機能・性能" が実現できているのでOKということですね。

ここで、一点注意するべきなのは、"一定の機能・性能" がどんなレベルのものか、ということです。
ACアダプタはかなり過酷な使われ方をします(発熱するし、密閉されているので熱が逃げにくいし、落としたりショックが加わりやすいし、コンセントにつなぎっぱなしの連続運転をしやすい)ので、きちんと動くことは当然のこと、寿命とか信頼性とかの指標がとても重要なのです。
この寿命とか信頼性は、部品を選んで回路を作り込むこと以外に、構成材料の耐熱性や強度といったグレードや、ケースに組み込むときの構造によって大きく変わってきます。

そこで、MOONSのACアダプタでは、と、本当はいばりたいのですが、そうそううまくはいきませんでした。。。
これらのことを全て満たすように設計をかんばったところ、どうしてもしわ寄せがコストにいってしまい、なんとも高価なプリント板ができてしまったのです。
プリント板の材質はFR4(強度・熱耐久性ともに高いが高価)を採用して、両面部品実装にしたものが3枚も!! あの中に入ることになってしまいました。。。。もう少し何とかならなかったのかと反省。


---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!_その3
2006.04.24 (つ)


だいぶ時間がたってしまいましたが、その間いろいろと試行錯誤をしながら、少しずつ進んでおりました。
その経過を書いてみます。

まず、前回のディアースキン(鹿革)から、グローブレザーへ変更しました。
鹿革は柔らかくて良いのですが、中に入れるものがある程度大きさ・重さがあるため、もう少しハリのある材質がいいだろうということでの変更です。
グローブレザーとは、名前のとおり野球のグローブに使う革で、有名な所では以前のCOACHのバッグがこの革を使っていました。私はあの質感が大好きですので、この変更案は即採用でした。
ハリがありながらなめらかな柔軟性が出るように、厚さ2mmを選びましょう。と、工房のご主人。
それと大きな声で言えない理由がもう一つ。そもそも厚手のディアースキンはとんでもなく高価!!!で用途が限られるんですね。たいへん勉強になりました。。。

次に袋のデザインです。私が一番こだわったのは、シンプル イズ ベスト! その上で、収納するのに取り扱いやすく、機能美を感じさせるデザインです。外観は「大人のステーショナリ」でなければいけません。
何度も絵を描きながら工房のご主人と相談して、二度目の試作が完成しましたが、いま少し気になるわけです。。。(次へつづく)


---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!_その4
2006.05.12 (つ)


ふつう袋を作るときには、2枚合わせた生地の辺を縫って裏返しますよね。そうすると縫い目が袋の内側にかくれてすっきりします。一度目と二度目の試作はその縫い方でした。
それはそれでいいのですが、いまひとつカッコが冴えない。。。袋の表がのっぺりした感じといいましょうか。。。

工房でご主人とそんな議論をしていると、「手縫い」というのもあるという話になりました。
そこで「手縫い」の物とそうでないものを見比べると、全然違うわけです。手縫いの縫い目はとてもしっかりしており、それでいて縫い始めから終わりの留めまでが繊細な仕事だと、出来上がりだけを見ても分かります。

「この手縫いいいですよねぇ。」
「これで仕上げるとすると。。。せっかくなので、縫い目を見せるべきですよ!!」
袋の表から縫い目を見せるように(縫ったあとに裏返さない)作ってもらいました。太めの白糸で入ったステッチは、革とのコントラストがとてもカッコいい。
最終的に、全体のデザインバランスを考えて、同じ縫い目で飾りステッチも入れることにしました。
そうですよ、こんな感じ!シンプルでいてカッコいい!

「手縫い」について少し説明を加えます。
「手でミシンを掛けることを手縫いに含める人もいるが、自分は全て手作業しか手縫いと認めない」とご主人の弁。まず縫い目のピッチで革にマーキングしてポンチで穴を開ける。そして針と糸を使い手で縫い合わせて行くわけです。
「縫い目が揃わないのを味という人もいるが、自分は真直ぐにそろった手縫いにこだわっている」との言葉どおり、とても美しく揃った、繊細で力強い手縫いなのです。

ただし、手で縫うということは一縫いごとに手間がかかるので、工賃は高くつくんだな、これが。


---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!_その5
2006.06.23 (つ)


本プロジェクトもそろそろゴールに近づきました。「こだわりの収納袋」最後のこだわりは袋の留め方です。

革の袋にある程度重量のあるACアダプタを入れることになりますので、そのまま留めずに手で持ち歩いたりカバンから出し入れすると、すぐに入り口が開いてACアダプタが出てきます。袋の「姿勢」がだらしなくなってしまうのも許せませんでした。
やはりきちんと留めなければと思っていたのですが、なかなか良い方法を思い付きません。

フラップを付けてボタンで留める方法や、磁石の留め具(ハンドバックによく使われている)を用いる方法は、先の「姿勢」の点で今ひとつきちんと形を保つことができません。
革のベルト(腕時計のベルトのような)を作って巻いて留めると、「姿勢」は決まるのですが、少し飾りが付いた感じに違和感が出ました。

もともと、始めにイメージしていたのは、古くからある大工道具を入れる袋のように、紐でぐるぐると巻くこと。これは一見問題なさそうですが、巻いた後、紐の端の処理にとても困りました。理想は、一方の手で袋を持って、もう一方の手でぐるぐると巻いて留める。そうできれば、留める動作もスムーズできれいに決まります。
ところがこれが非常に難しい。紐の端をどうにかして結べばよいのですが、結ぶためには本体を机に置いて、両手を使う動作になります。これは面倒ですし、そもそもカッコ良くない。

先の案のベルト(腕時計のベルトのような)なら、許せる範囲なのですが、一度はそれで決めようともしたのですが、やはり違うなと思いました。
(次へつづく)


---------------------------------
こだわりの収納袋プロジェクト!_その6
2006.06.30 (つ)


袋の留め方にこだわって、そんなこんなで、数週間悩み続けたころ、「ダッフルコートのボタン」と言ってくれた人がいました(I店長ありがとう)。

なるほど、その構造なら片手で留められそうです!
紐の端を結んでボタンを留めてしまおう。そうすると、袋が馴染んだときに紐を結び直して長さの調整が簡単に出来るし、自分の好みで違うボタンに変えるのも簡単ですね!

そうと決まればどんなボタンが良いかです。いろいろと探したのですが近くにはいい物が無く、結局東京のショップまで(九州から!)探しに行ってしまいました!!(出かけたついでもあったのですが、そこまでやるかと。。。)
それで、天然水牛の角。色や質感は本当に良いですし、大きさと形も選んだので、袋全体の姿に見事に合いました。
「シンプルでいてカッコいい」ながら、使い勝手もきちんと考えたいい袋になったなぁ、と思います。

ということで、こだわりの収納袋プロジェクト! は終了するのですが、本プロジェクトで一番勉強になったのは「こだわればこだわるほどお金も時間もとんでもなくかかって、商売にするのは難しい」ということでした。。。。いやいや、楽しかったですね。

SPECIAL THANKS: 大分県中津市 日ノ出町商店街 ハンドメイド革工房LaF



--